アルファ線内用療法-211Atを用いたミサイル療法-

2016.04.09.
大阪大学大学院 理学研究科 天然物有機化学研究室 教授 深瀬浩一

我々はα線放射性核種211Atを用いたがんのα線内用療法の開発を目指している(図).内用療法とは放射線源を体内に投与し,体内からがんに放射線を照射する治療法で,現在までに,β線放出核種を利用した手法が実用化されている.α線はβ線よりもエネルギー付与が大きく,強い細胞殺傷能力を持ちながら,その飛程が短いので周辺臓器への侵襲はより少ないという優れた特徴を有する.一方で,短い飛程のためβ線のような周辺臓器への攻撃(クロスファイアー効果)が期待できず,如何にターゲットとするがん組織に集積させるかが成否の鍵となる. 我々は抗体をはじめとするがんに特異的に集積する分子にα線核種を結合させることで,がん細胞特異的にα線を照射してがん細胞を殺傷するα線内用療法の世界で始めての実用化を目指している.α線源としは211Atを用いることとした.211Atは半減期が7.2 時間と比較的短く,投与後しばらくすれば体内から放射線が消失し,通院による治療が可能となり、患者のQOLの向上に繋がると期待できる.これまでに211Atで標識した抗体の調製およびその細胞障害活性を調べた.リンパ腫に対するβ線内用療法で実績のある抗CD20抗体にボランを介して211Atを抗体した.抗体への211At導入は,デカボランで標識した抗体に対して,Na211Atを用いて反応時間はわずか2分程度で, 温和な反応条件により達成することができた.また,この化合物の生成は限外ろ過のみで行うことができ,211At製造からわずか2時間程度で211At標識抗体を調製することが可能であった.さらに,調製した211At標識抗体をCD20高発現細胞であるRaji細胞に対し,211At標識抗体を加えたところ,有意な細胞障害活性を示した.

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院 理学研究科 天然物有機化学研究室 教授
深瀬 浩一(ふかせ こういち)
〒560-0043 大阪府豊中市待兼山1番1号
koichi@chem.sci.osaka-u.ac.jp

最近の投稿

月別アーカイブ